将来計画及び運営方針 277
5-3-1 現在の計算機システムと運用
2003年2月現在の計算機システムの概要を下図に示す。図の左側は2000年3月に導入されたスーパーコンピュータ システムであり,本年度に更新され E 地区に設置された汎用高速演算システムは右側に示している。
スーパーコンピュータシステムは,富士通製 V PP5000 と S GI 製 Origin から構成される。V PP5000 は 1 C PU 当たりの 最高演算性能が 9.6 Gflops のベクトル演算装置30台から構成され,各 C PU に 8 ∼ 16 GB の主記憶装置を持つベクトル 並列計算機である。一方,S GI Origin は 1 C PU 当たりの最高演算性能が 0.6 ∼ 0.8 Gflops のスカラ演算装置 320 C PU か ら構成され,C PU 当たり 1 GB の主記憶をそれぞれの C PU から共有メモリとしてアクセスが可能な分散共有方式の超 並列計算機である。V PP5000 では高速なベクトル演算能力を活かした大型ジョブの逐次演算処理はもちろん,例えば 8台以上のベクトル演算装置を使った大規模なベクトル並列演算が可能となる。Origin2800/3800はNon Uniform Memory A ccess(NUMA )方式と呼ばれる論理的な共有メモリ機構を有する。NUMA は主記憶装置が各 C PU に分散して配置さ れているため C PU から主記憶へのアクセス速度が非等価ではあるが,利用者プログラムから大容量のメモリを容易に
SGI SGI2800,Origin3800
cco2k1 32CPU cco3k1 128CPU cco2k2 32CPU
cco2k31 128CPU
日本電気
TX-7 64CPU
File Server
Frontend ccfep1 ccfep2
富士通 VPP5000 30PE 日本電気 SX-7 32CPU
汎用高速演算システム
スーパーコンピュータシステム
機構ネットワーク CISCO Catalyst
高速シミュレーション 日立 SR8000 6CPU
5-3 計算科学研究センターの現状と将来構想
図1 システム構成図(平成15年2月1日現在)
278 将来計画及び運営方針
利用することが出来,大規模な並列ジョブの実行が可能となる。
一方,今年度に導入された汎用高速演算システムは,NE C 製 S X -7 で構成される主システムと T X -7 で構成される副 システムとから成る。NE C S X -7 は 1 C PU あたり 8.8 Gflops の最高演算能力を持ち,256 GB の共有メモリに結合され た 32 C PU の演算装置から構成され,総合演算性能 282.5 Gflops の共有メモリ型ベクトル計算機である。また,T X -7 は 4 GB のメモリを持ち最大 4 Gflops の演算性能を有する C PU を32台搭載したノードを基本単位として構成されている。 本システムは2ノードから成り,合わせて 64 C PU,256 GB ,256 Gflops の総合性能を有する分散メモリ型スカラー計 算機である。このうち主システムは高速演算,大容量メモリを活用した大規模分子科学計算に用いられ,また副シス テムは分子科学計算に加え,ホモロジー検索を主としたバイオサイエンス分野での利用に供される。
本計算科学研究センターは,今年度も国内約150グループ,600名にも及ぶ分子科学者に対して共同利用施設として 広くサービスを提供し,分子科学分野における計算科学の中核的拠点センターとしての役割を果たしてきている。一 方で,世界の最先端研究をリードしこれを推進していくために,各研究室における小規模のワークステーションクラ スタはもちろんのこと,他の計算機センターでも不可能なような大規模計算を実行可能とするために,今年度からは 従来の「一般利用」枠に加えて試験的に「特別利用」枠を設け,巨大計算のための環境整備を行ってきた。ここでの 成果を踏まえて次年度からは「特別利用」枠を本格的に運用し,センターの全 C PU 性能の約半分を上限として,計算 分子科学分野において世界のピークとなる巨大計算の場を提供していく予定である。
5-3-2 計算科学研究センター将来構想
「計算科学研究センター」を廻る環境は大きく変化しようとしている。そのひとつは2004年度に始まる法人化および それにともなう分子科学研究所,基礎生物学研究所および生理学研究所の「自然科学研究機構」への再編成である。他 のひとつは本年度の補正予算で認められた「ナノグリッド計算」研究プロジェクトの発足である。これらのふたつの 変化はこれまでの計算科学研究センターの位置付けや運営そのものに甚大な影響を及ぼすため,この点について述べ ておきたい。
(A ) 「自然科学研究機構」の発足と計算科学研究センター
本岡崎国立共同研究機構の3研究所は2004年度を期して国立天文台および核融合科学研究所とともに新たに「自然 科学研究機構」として再出発する。この再出発に際して岡崎機構の4つの共通施設(統合バイオサイエンスセンター, 計算科学研究センター,動物実験センター,アイソトープ実験センター)をどのように位置付けるかということが大 きな課題となっている。未だ,最終的な結論にいたってはいないが,現段階では,「これらの4つのセンターを『岡崎 共通施設』として位置付け,それぞれのセンターの管理,運営(予算,人事を含む)についてはそれらのセンターが もともと所属していた研究所が全面的な責任を負う」という線でまとまりつつある。法人化後の計算科学研究センター の将来計画についても分子科学研究所の責任において作成することになっており,下記のような基本的な精神でまと めつつある。
[将来計画]
計算科学研究センターは,分子科学分野における計算科学の拠点として分野に先導的な研究を実施するとともに,計 算機資源を分子科学に関わる全国の共同利用研究に供し,計算分子科学の飛躍的な進展を目指す。同時に,分子科学 のひとつの応用として,生物科学やナノ科学分野への新たな展開を図る。
これらの目標を実現するため,理論研究系との連携の下に,量子化学や分子シミュレーションなどに関わる計算分
将来計画及び運営方針 279 子科学の新しい方法論を構築し,また大規模計算を実行することにより,これまでは不可能であった分子や分子集団 系の複雑なふるまいの解明を目指す。一方で,分子科学,および分子科学と他分野との境界領域における計算ニーズ に応えるために,ハードウェア,ソフトウェア,スタッフの充実を図る。
[共同利用研究の内容]
主として電子状態理論,化学反応動力学理論,分子シミュレーション,統計力学理論等に基づいた計算科学的手法 を用いて,分子の電子状態と構造,化学反応経路や反応メカニズムの解明,そして凝集系における分子集合体の構造 や動力学など,分子科学に関わる世界トップレベルでの理論的研究を行う。一方で,これら分子科学研究を基盤に持 ちながら,生物分子科学,ナノ分子科学をはじめとして,分子科学と他分野との境界領域における計算科学研究を展 開する。
[共同利用研究を進める場合の改善内容]
従来は,広く分子科学者の研究需要に応えるために中規模程度までの計算を主な研究対象としていたが,これに加 えて世界をリードする先端的な研究を実施するために,全 C PU 能力の半分程度の資源を集約して,厳選された少数の 研究者が一般の計算機センターでは不可能な大規模計算を実行できる環境を整える。一方で,計算分子科学の共同利 用研究が円滑に推進できるよう,これまで不充分であった当該分野の計算科学的手法に関するライブラリーソフトの 整備を進める。
(B ) 「ナノグリッド計算」研究プロジェクト
2003年度より「ナノグリッド」と名付けた研究プロジェクトが計算科学研究センターを中心に発足する運びとなっ た。このプロジェクトは我が国にグリッド計算環境を整備することを主眼として進行している国家プロジェクト「超 高速コンピュータ網形成プロジェクト(NA R E GI)」の分野別研究開発拠点として「グリッド計算環境の有効性を実証 する研究」の推進を目的に5年間の予定で行われる。
昨年,計算科学研究センターは我が国における物質系5研究所の共同提案として「ナノ計算科学」プロジェクトに 関する概算要求を提出していた。(提案の主旨等については2001年度「分子研リポート」を参照のこと。)このプロジェ クト自身は採択されなかったが,これと同様の主旨をもつ上記のプロジェクトが,今回,NA R E GI プロジェクトの一 環として補正予算の形で採択されたものである。
本プロジェクトはグリッド計算環境下で以下に示された6つの課題に関する研究を遂行し,それらの研究成果を通 じてグリッド計算環境の有効性を実証すると同時に,ナノサイエンス分野における統合シミュレーションシステムを 構築し,大学や産業界の研究者に広く公開することを目指している。6つのグループの研究課題と担当研究機関は以 下のとおりである。(これらの研究機関の他に,高エネ機構および京大・化研がグループメンバーとして共同研究を行 うことになっている。)
1) 機能性ナノ分子(分子研) 2) ナノ分子集合体(分子研) 3) ナノ電子系(東北大・金研) 4) ナノ磁性(東大・物性研) 5) ナノ複合設計(産総研)
6) ナノ設計実証(産業界から公募)